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90パーセンタイルから95パーセンタイルまでの層は気の毒なことに、この比率が低下している。
95パーセンタイルから99パーセンタイルまでの層も、この比率がわずかに上昇したにすぎない。
90パーセンタイルから99パーセンタイルまでの層全体の課税所得をみると、この比率は80年が24パーセント、2005年が26パーセントであって、ほぼ変わっていない。
つまり、上位10パーセントの比率が上昇したのはほぼすべて、最上位の1パーセントで所得が急激に増加したためなのだ。
この層の課税所得は、国民全体の課税所得に占める比率が9パーセントから19パーセントに、ほぼ2倍になっている。
最上位1パーセントの中ですら、所得分布は極端に上に偏っている。
比率上昇分の60パーセント近くが最上位0.1パーセントに集中し、4分の1近くが最上位の0.001パーセントに集中しているのである。
最上位0.01パーセントには課税所得全体の約9パーセントが集中し、この比率が過去4半世紀で3倍以上になっている。
最上位0.001パーセントに、つまり1万5千人にも満たない納税者に、課税所得全体の3.6パーセントが集中し、この比率が過去4半世紀で4倍にもなっている。
この1万5千人では、2005年の課税所得が平均2千600万ドル、合計3千840億ドルである。
保守派の論者はこの統計を激しく批判している。
その一部は根拠のある批判だが、主張の一部は逆方向に行きすぎている。
上に引用したデータは納税申告に基づいており、社会保障給付金のうち課税対象になるものを除いて、政府の移転支払いが対象になっていない。
K研究所のアラン・レイノルズは、移転支払いが合計1兆5千億ドルにのぼり、上位1パーセントの課税所得の合計を上回っていると指摘する。
納税申告に基づくデータは、「メディケイド(低所得者・障害者向け医療扶助制度)、食料切符、勤労所得控除などの移転支払いの大部分をまったく見逃している」という。
そうは明言していないが、貧困層向けの制度が移転支払いの大部分を占めているというわけだ。
だが実際には、貧困層向けは移転支払いの約3分の1を占めるにすぎず、その大部分は医療サービスの形をとっている。
アメリカの移転支払いは主に高齢者向けであり、高齢者は過去20年ほどに生活が大幅に向上している。
これはアメリカが誇るべき点だ。
1960年代から70年代にかけて、社会保障給付が引き上げられる前には、高齢者は貧困者がとくに多い年齢層だったが、いまでは貧困層がとくに少ない年齢層になっている。
しかし、移転支払いは現役世代の所得にはほとんど影響を与えていない。
高齢者層を除けば、実際の所得分布は納税申告データから導き出されるものとそれほど変わらない。
レイノルズは、納税申告に基づく統計が所得の不平等を過大に示しているとする第2の理由として、こう指摘する。
「中所得者層では、投資所得のうち、個人退職所得勘定、41k確定拠出年金、529学費貯蓄による非課税部分の比率が上昇しており、高所得者層はこれら制度を利用できない」。
別の論文では、こう主張している。
「中産階級の世帯とは違って、上位1パーセントの世帯では、投資所得は納税申告の対象になっている。
ほとんどが課税対象であり、各種の優遇税制の対象にはなっていないからだ」この批判は誠実だとはいえない。
上位1パーセントで投資所得の大部分が課税対象になっているのは、あまりに巨額だからである。
2004年には、個人の事業所得の62パーセント、個人退職所得勘定と41k確定拠出年金によるものを含めて、個人所有の株式の51パーセント、債券の70パーセントがこの層に集中しているのだ。
高所得者層では、優遇税制制度を使って保有している資産は、純資産に占める比率こそ低いが、金額でみれば中産階級よりもはるかに多いのだ。
1999年の財務省の調査によれば、退職所得制度による税制上の優遇のうち、上位10パーセントの世帯が43パーセントを、上位20パーセントの世帯が66パーセントをそれぞれ得ており、下位60パーセントが得ているのは12パーセントにすぎない。
従業員向けの健康保険と確定給付年金を優遇して、法人税収の減少という形で財政上の負担が発生しているが、その受益者でも同じパターンになっている。
公共セクター以外では、一般従業員は以前からの確定給付年金制度の対象になっていないのだ。
健康保険と企業年金を合計すると、財政負担はメディケイドとほぼ変わらない規模であり、受益者は上位20パーセントの世帯に集中している。
いずれにせよ、過去数10年にアメリカで不平等が拡大してきたかどうかという問題は、事実上の決着がついている。
保守的なエコノミストとして尊敬されているFRBのB議長が2007年2月に広範囲なテーマを扱った講演で、各種の証拠を検討し、格差拡大の事実は確認済みだと指摘した。
そして、今後の課題として、その原因を解明するよう経済の専門家に過去十年にすでに、経済学者が格差拡大の原因について多数の論文を発表している。
いずれも、賃金格差が拡大を続けていることを確認し、この拡大がおそらくは1960年代にはじまり、80年代にあきらかに加速するようになったと指摘している。
それだけでなく、賃金格差の拡大の影響を強める要因として、付加給付の格差も拡大し、とくに健康保険と企業年金で一貫して高給の従業員が優遇されている。
また、低熟練労働者層で所得が以前よりはるかに不安定になったことも、十分な事実によって証明されている。
職が不安定になって、貯蓄を増やしていくことができなくなり、健康保険などの基本的な付加給付もたえず中断されるようになった。
格差拡大の原因については、法定の最低賃金が実質ベースで下がっていること、仕事がグローバル化し、労働組織率が低下したこと、労働力人口の中で教育水準とスキルの格差が拡大したこと、安価なコンピューターの普及で高度なスキルをもつ層の生産性が向上したことなどが上げられている。
コンピューターの普及という点には、とくに注目するべきだ。
いくつもの要因が重なって、影響が増幅している可能性を示しているからだ。
大学院教育の普及でスキルの格差が拡大しているだけでなく、インターネットとパソコンによって、スキルがとくに高い層がこれまで以上の仕事ができるようになっているのである。
学者の分析のうち、D・オーダー、ローレンス・カッッ、メリッサ・カーニーの共著による論文の内容を少し紹介していこう。
この問題について最終的な答えをだしているわけではないが、今回検討した数十の論文の中では、複雑なデータをとくに深く分析している点が目立ったからだ。
3人の著者は、職の分布、賃金、従業員の教育水準に関する詳細なデータベースを1963年から2005年までの期間を対象に構築しており、国勢調査や労働省の月次統計など、各種のデータを使っている。
この期間にこれら統計の調査方法が何度か変わっているので、データは完全ではない。
だが、過去数十年にアメリカの労働市場で起こった地殻変動を、これ以上は考えにくいほど正確にとらえている。
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